今回はアメリカにおける
- LD
- プログラマー
- 照明デザイナー
の3つのポジションについて、まとめてみました。
LDはあえてLDにしたのは、
そもそも、LD=照明ディレクターだと言う人もいるし、照明デザイナーだ、と言う人もいるからです。
特にアメリカの業界における使い分けって、わかりずらいですね。
ここでは自分が従事するアメリカのコンサート業界のスタンダードでお伝えします。
渡米を考えている方は、抑えておいたほうがいい部分です。
LDって?
コンサート業界では、LD = 照明ディレクターをさすことが多いです。
芝居やミュージカルでは、LD = 照明デザイナーだ!っていう人が多いと思います。
ではそもそもディレクターってなんだってことになります。
これは、照明のディレクション=方向性を決める方です。
つまりツアーに同行し、各々の会場で変更が出た場合、その決定権をもつと言っていいと思います。
例えば「この会場じゃどうしてもこのトラスが吊れないから、カットで。」etc…
じゃあ、そもそも「オペレーターじゃないの?」って言う方もいると思います。
その通りです。
LDというポジション内にオペレート作業が入っている、って理解で良いと思います。
オペレーターと言う肩書きでツアーを回っている場合、そのパワーバランスが見えてくると私は考えます。
「仕込み変更時の大きな権限は持ってない。」と考えるからです。
オペレーターという肩書きが発生する場合、プロダクションマネージャーが兼照明デザイナーだったりしました。この場合、変更があればプロマネの彼が権限を持ちます。
LDでも、ツアー開始序盤での大きな変更があった場合、LDがデザイナーにお伺いを立てる、と言うことも多々あります。これは普通です。
ただ、もう既にかなりの日程を稼働している(1年近くとか)ツアーの場合、デザイナーから少し手が離れ、「そのLDの仕込み」というバランスになっていくと考えます。
じゃあプログラマーって?
これは文字通り、プログラムを行う方です。
ここで重要なのは、そのプログラムしたデータを「LDに受け渡す」ということです。
なので、プログラマーはツアー稼動時に「そのLDがデータを使いやすいか」ということも考慮に入れなくてはいけません。
また、プログラム中にLDに「モールはここに入れるから」とか、「ここは手煽りでお願いします」など、細かく伝えることも重要です。
なので、パレットの配置をはじめ、しっかり明瞭になっていることが「良いプログラマー」ということにもなります。
なので、MA2であれば、MA3Dもショーデータ内にしっかり入ってますし、ツアーに送り出す際、「何かあったらすぐ連絡をくださいね」と、LDへのアフターケアに、気を遣ってくれるプログラマーもいます。
また、デザイナーがやりたいことを先読みして、パレットを作っておくなどの考慮も重要です。タイムロスが一番厄介で、いろんな意味でリスキーだからです。
(次の仕事に繋がるかにも、関わるからです。)
また、一概には言えませんが、灯体のモード設定の決定権はプログラマーが持つことが多いと思います。
もちろんデザイナーのやりたいことも踏まえて、です。
私がプログラマーをやった際は、デザイナーに概要的なやりたいことを聞いた上で、モード選定を行いました。
その時は、Chroma-QのColorForceを大量に使っており、全てハイチャンネルモードでは、恐ろしい数のチャンネルになりますし、その場合、手数も増えて自分で自分の首を閉めるのが、明らかだったからです。
じゃあ照明デザイナーって?
そもそもデザインは、日本語訳で「設計」を意味します。
日本だと、どうしてもアーティスティックな面ばかり目が行きますが、その部分の比重ももちろんありますが、予算をはじめ、実質的なトラスの配置をクルーチーフ、プロマネと交渉する、アーティストの意向を聞き実現するなど、ディスカッションの部分が大きいと思います。
そう考えると、こちらでは「プランナー」という言い方はしません。
プランナーという言葉は、こちらでは逆に「うーん、それってどこまで権限もつの?」って思われてしまうと思います。
ポジション分けると「非効率的」じゃない?
以上のように3つのポジションを分けることで、一見すると「非効率的」のようにも見えますが、例えば以下の場合いかがでしょうか。
- リハはロス郊外のアーティストが持つスタジオ。デザイナーは同行しなくてはいけない。(西海岸側)
- 卓を含む機材レンタルはシカゴの会社。(東海岸側)
- リハ日程は、機材出庫のギリギリまで続く。
- プログラム作業は同様のシカゴの会社で、出庫日まで打ち込み可能。
この場合、デザイナー兼プログラマーでは、卓を自宅に持っていない限り、作業できません。
リハ後にレンタル会社へ移動って、、、。ロスからシカゴまで、飛行機で4時間かかります。
数百台を越すムービングライトの打ち込みを、コマンドウィングとPCでやるにも、かなり負担がかかります。
この場合、信頼のおけるプログラマーにシカゴで作業してもらい、やりたいことをしっかり伝える、ということの方が、はるかに効率的で、精神的にもデザイン作業に集中できますし、交渉ごとにも時間を取れますね。
これは一例ですが、アメリカではこういった国土の問題もあると考えていいと思います。
まとめ
もちろん作業時間や予算、会場規模を考慮して、LD兼プログラマーなど兼任することも多々あります。
私も日本では、チーフ兼、プランナー兼、オペレーターで、自分一人でやる現場がほとんどでした。
ただこれが3つに別れると、人も増え、予算が増える。
いろんな弊害もありますが、照明に携わる人間の「絶定数」は増えるわけですから、人材の裾野を広げる面では、良いことだと思いますね。
ここに若手が食いこむチャンスも生まれてくるのです。