DMXcatなどのテスター機器をはじめ、よく出回るようになってきたのがこのRDMです。
Remote Device Management の略で、その名の通り、「接続された機器の遠隔マネージメント」に使用することが多いですね。
これは、DMX512の規格を介し、”Bi-Directional Communication”=双方向性の通信を可能にしたものです。
「DMXが使用するRS485のレイヤーを使用する」という形です。
つまりRDMは、DMX信号と同回線上に共存して使用できるようデザインされている、という理解でいいと思います。
てか、XLR 5pinの中の、空いているPin4, Pin5を使用してるの?
答えは「いいえ」です。
DMX同様、Pin2、Pin3を使用しています。
確かに5pinにおけるPin4, Pin5は「今後の技術発展のために残した余剰」と説明される場合がありますが、製品によっては「低ボルテージ用」など、独自にPin4, Pin5を使用している機器が既に存在したため、それらとの衝突を避けるためにDMXと共通するPin2、Pin3を使用する設計になりました。
構造って?
RDMの信号は、以下の構造で構成されています。
・Start Code
・Sub-Start Code
・Message Length
・Destination UID
・Source UID
・Transaction Number
・Port ID/Response Type
・Message Count
・Sub-Device
・Message Data Block
・Checksum
これだけみても、「は?」って感じですよね。
この中で私自身、「現場で知っておきたい」と思ったのは、最初のStart Codeと、UIDに関する項目でした。
RDM は「DMXに代わるStart Codeを使用して送信される信号」であるため、時々RDMを使用するとフリッカーを起こすムービングライトなどがありますが、これはこのStart CodeをDMXと誤認識していることが原因です。
そのため、この場合RDMの信号を切ってやると収まります。
また、このUID (Unique ID)を使用することで、同じアドレスでも灯体を検知することができます。
DMXcatでもUIDは出てきますよね。
このUIDは、48ビット構造であり、16ビットはESTAにより定められた製造元のIDを示すもの、残りの32ビットを製造元がシリアルナンバーのようにデバイスに割り当てられるようになっています。
なのでRDM対応製品は、メーカーが既にUIDを割り振っています。
これにより、各デバイスをDMXアドレスなどには関係なく個別に認識可能であり、灯体だけでなくRDM対応のスプリッターやノードも検知可能になってきます。
メッセージの送受信
RDMでは、一旦デバイスを発見すると、先の構造にも出てきた「Message Data Block」の部分でメッセージを送信します。
そのため、アドレス変更、ランプのオン/オフなど、様々な操作が可能になるのです。
この、Message Data Block内だけでも、
・Command Class
・16ビットParameter ID
・Parameter Data Length
・Parameter Data
で構成され、コマンドによりどんな指令にするのかを決定しています。
デバイスを “Discover = 検知” するプロセス
RDMでは”Binary Search Tree”=二分探索木というサーチ方法を行います。
まるでトーナメント表で言う「優勝」の部分から、第一回戦の方向へ、どんどん降っていくような形式、と言うとわかりやすいかもしれません。
「レスポンスがあれば、その次の枝木へ」と一方方向にどんどん向かっていきます。
一旦デバイスからレスポンスがあると、そこでの検索を止めます。
(厳密には“Muteする”というメッセージを送ります)
その後、また他の接続されている枝木へと向かって検知していくのです。
注意点!
古いスプリッターなど、光学的にアイソレートされた機器を灯体との間に挟んでいる場合、RDM機能がその灯体に使用できない場合があります。
RDMを使用する際は、ダウンストリーム側にある機器がRDMに対応しているか、もしくは「RDM Enable」に設定されているかを確認する必要があります。
図のように、RDMに対応していない機器が間にある場合、RDM信号を受け取ることができません。
RDMの発表と改訂
RDMはESTAにより2006年に発表され、2010年に改訂が行われました。
この改定年数を覚えておくのが結構重要です。
というのも、
現場で併用する機器がそれ以前に発売されたものかどうか、RDMの使用を考えている場合は、今一度確認する必要があるかと思います。
まとめ
私自身も、トラス上の灯体のアドレス変更などにも使用したこともありますし、使用方法によっては大変便利になりました。
仕込みでも、テストコンソールの設置が間に合わない場合の、信号ラインの即席チェックなどにも使用できると思います。
ダウンストリーム側の機器がRDMに対応していて検知できれば、最低でもそのライン上の信号線(Pin2、Pin3)が正常であることは確認できますね。
実体験として「あらかじめRDMの使用を考慮に入れた仕込み」というところまで、RDMの優位性が高くなっているシステムデザインは、現時点では見たことがありませんが、リスキーな仕込みがある場合の手助けにはなると思いますね。