今回は、Vectorworksで作成した図面を、MVRで書き出し、そのままMA3で読み込ませてみる、という作業をしてみました。
その中で出てくるGDTFについての詳細は、以前記事にしてみましたので、そちらの方も参考にしていただくと、よりわかりやすいかもしれません。
リンク:GDTF について
また、この記事を書くにあたって使用しているソフトウェアのバージョンは以下の通りです。
Vectorworks Spotlight 2020 (英語 / Mac)
MA3 OnPC 1.3.1.3 (Windows 10)
「表示が違う!」などがありましたら、使用されているバージョンを確認してみてください。
Vectorworks 3D図面の内容
実際に元にした基盤は、Zepp Tokyoのサイズなのですが、書き込んだトラスなどはアメリカで使用しているオブジェクトを使用したりしてるので、カスタムされてると思ってください。
灯体:
Clay Paky – Sharpy (Vector Mode_ 20ch)
Martin – Viper Profile (16bit – Extended_ 34ch)
SGM – P-5 (10ch Mode)
Martin – Aura (Extended_34ch)
VARI LITE – VL4000 Spot (16bit-Enh_ 57ch)
James Thomas 8- Light Molefay (2ch)
以上の機材記載してみました。
気になるのが、ここから「どこまで灯体データを入力しておくか」だと思います。
全ての内容は、Object Info から入力していくことができます。
Object Info 表示手順
Window → Palette → Object Info
灯体番号
まず必要なのが灯体番号。
私は、Object Info内のUint Number だと思ってたのですが、MA3で反映されるのは、
Channel でした。ここに灯体番号を入力します。
Vectorworks Spotlightでは、
Spotlightタブ → DMX Patch で、
パッチ入力画面に行くことができますが、このChannelに番号が入ってないと、全てUnpatchedという表示になり、何がどの灯体なのか判別できません。
なので、まず灯体番号を入力し、細かい内容を足していくのがいいかと思います。
アドレスとユニバース
実際のワークフローを考えると、
アメリカでは、
灯体番号/モード = LD, プログラマー管轄
アドレス/ユニバース = クルーチーフ管轄
となっており、システム構築においても、どこでユニバースをくぎれるのかなどは、クルーチーフが決めることができます。そのため、実際のプログラム作業がすでに始まった後に、プログラマーにパッチ表を送るということが多いため、
Vectorworks (作図)
↓
MVR (エクスポート)
↓
MA3 (MVR をインポートし、プログラム開始)
DMXアドレスは仮入力
↓
チーフによりDMXアドレス決定 (倉庫準備)
↓
Vectorworksへ入力 & プログラマーへ連絡
DMXアドレス本入力
↓
Lightwright 書き出し etc…
↓
実際の倉庫準備
という流れかなと思います。
Object Info から実際に入力する場合は、
DMX Address
Universe
Universe/DMX Address
様々な欄から入力できます。
もちろんPatch DMXタブからの一括入力も可能です。
Vectorworks におけるGDTF
Vectorworks からGDTF を割り当てる際も、このObject Infoからなります。
ただし、Object Info内のGDTFタブに、指定の灯体を表示させるには、GDTFシェアサイトからファイルをダウンロードしたのち、以下の手順になります。
(Macの) アプリケーション
↓
Vectorworks 2020 フォルダ
↓
Plug-In
↓
VW_Spotlight
↓
Dataフォルダ
↓
GDTFフォルダ
↓
.gftfデータを中にドロップ
結構中へ入っていきますね、、、。
灯体の実際
違いを見たかったので、図面上の一部のMac Viper Profileで実験してみました。
201 = GDTF なし
202 = GDTF あり
203 = GDTF あり+180°回転 (舞台奥向き)
204 = GDTF なし→卓からMA2のFixture Profileをパッチ
と、この4台だけ仕様を変えて、MVRで書き出してみました。
MVR をエクスポート
Vectorworksの、
File → Export → Export MVR
で、簡単に書き出すことができます。
このMVRデータを、MA3のデータフォーマットが入ったUSBの
grandMA3 フォルダ
↓
shared
↓
resource
↓
lib_mvr
の中にドロップします。
MVR をインポート
今度はUSBを卓に挿し、
Menu (Gear Icon)
↓
Patch
↓
Import MVR
を選択し、読み込むだけでOK。
従来行う、外部のヴィジュアライザーでの作図時間が「そのまま節約」されたことになります。作業効率としては、圧倒的です。
では、そのクオリティを、先ほどのViper灯体も含め見てみましょう。
MA3内のデータ
先ほどのMac Viper。
卓で選択され、イエローに表示されているのが、下手から201 〜 204。
ちなみに赤い灯体はパッチされていないことを表します。
201
Vectorworksのシンボルのみ。
かなり綺麗にViperが再現されてますね。
しかし残念なのが、制御できない。
DMXの使用チャンネルも1と、本当にオブジェクトとして、です。
202
GDTF ファイルが機能し、形状は少し荒いですが、プログラム作業的には許せる範囲です。
203
同じくGDTFファイル。ただしVectorworks上で舞台奥向きに反転させたものですが、卓上でも、180°反転の吊り込みになっていました。
吊り方も反映され、便利です。
204
これがMA3卓内の「MA2 Fixture Library」からパッチしたもの。いわばデフォルトです。
うーん、201、202とはかなり差がありますね。一瞬、Studio Spot 250を思い出しました。
High Endもびっくり。
ちなみに、今回使ったSharpyのGTDFファイルが優秀で、
真ん中がGDTFファイル。ビームもしっかりリアルです。
アッパーボックスのディスプレイまで再現されてます。
ちなみに、その上手隣、グレーの灯体はMA2 Fixture Library。
High Endではありません。(笑)
MVRからのMA3全景
Sharpy のプリズムもちゃんと入るし、プログラムにはとても良いのではないかと思います。
また、3D Window Setting から、Beam、Spotなどの明るさも調整できます。
今後ソフトウェアもアップデートされていくことを考えると、発展していきそうです。
気になったのは、8灯体モールの良質な3Dモデルがなく、ブラインダー系がもっと良いものが出てくれば、なおさらいいかなと思います。
LED ストロボ系、LEDパネルなどは、Patchからビーム角度を実際のようにフラットに変更できるので、好みに応じて見え方も調整できます。
Chamsysに内蔵の、ChamSys Vizでも、4灯体モールはビーム角度を変更しますよね。
これがプレゼンテーション用のレンダリング、となるとまた評価も別かもしれません。
そうなると、まだ正直物足りないかと思います。
細かく書き込んだら、今度はパソコンそのもののスペックも考慮が必要になってくるでしょう。
ただ、「外部のヴィジュアライザーでの作図時間なし」というのは、かなりデカイのではないでしょうか。
参考になれば幸いです。
図面&写真:Yoshi