今回はGDTFについてまとめてみたいと思います。
MA3から採用されているGDTFですが、「いや、フィクスチャープロファイルでしょ?」という説明のみで終了することが多いのではないでしょうか。
それもそうなんですが、それだけだと、まるで、
キャンピングカーを「これは車です。通勤にも使えます」
って説明しているみたいな。
もう少し、なぜキッチンやベットが付いたかも、ここでは説明できたらと思います。
名称
GDTF = General Device Type format
「それぞれの機器の、一般的なフォーマット」ということです。
もともとは、MA Lighting, Robe, Vectorworksが始めた企画ですが、どんな背景で生まれたのでしょうか。
膨れ上がったフィクスチャープロファイルデータ
ここではMA2を元に記載します。
まず、パッチする際に必ずライブラリーから呼び込むのがこのフィクスチャープロファイル。
メジャーな機器であれば良いですが、少しマイナーな機器においては卓を最新にバージョンアップしたとしても、出てこないこともありました。
また逆に、最新機器も同様でしたね。
私が経験したのは、去年「デザイナーに向けてVL5 LED Washのデモをやるから、比較できるようなシーンをプログラムしてもらえる?」
ってことで臨んだものの、MA2を前にして「いや、フィクスチャープロファイル、ないやんけ」
と言うことになり、MA Fixture Builder で灯体プロファイルを作成しました。
(作り方はまた別に記載したいと思います)
このようなこと以外にも、フィクスチャープロファイルのカスタマイズが可能になり、プログラマーのやりやすいように、自在に変更が可能になりました。
これはこれで良いのですが、エクスポート、インポートを繰り返し、プログラマーを渡り歩いて、誰が作ったデータなのかもわからなかったりしたはずです。
たとえば100%でアイリスオープンなのか、0%でオープンなのか、そこだけ変更されていても、もうオリジナルではない。
また、MA2という卓の特性上、クリーンスレートからデータを打ち込むのではなく、パレットを引き継ぐことができました。
なので、過去に使用した灯体を、9000番台に1台だけどんどん残しておく方も多かったのではないでしょうか。
これら全て、どこでもらったものか、作ったのか、オリジナルなのか、覚えておくのは、面倒です。
フィクスチャープロファイルの責任
GDTFが出てきた要因の1つは、作成されたフィクスチャープロファイルの責任を、誰が持つのかをはっきりさせる、ということです。
オリジナルのGDTFデータは、
「現時点ではまず灯体の製造元が作ることが大前提」とされています。
「現時点」と書いたのはGDTFが発展途上のためです。コンセプトの生みの親、MA Lighting, Robe, Vectorworksが現時点でプッシュするのは、オリジナルは製造元が作る、と言うこと。
そこから個人でカスタマイズする場合は、作成後、誰が作成したものなのか名前を残す。
そのため、登録は無料ですが、GDTFサイトへはログイン登録が必要です。
こうすることで、まず不具合が出た時の問い合わせ先がはっきりしますね。
また、これだけチャンネル数が多くなってきた昨今の灯体事情に対し、灯体機器そのもののファームウェアのアップデートも頻繁に行われる中、アップデート後に卓のフィクスチャープロファイルとの問題が生じることもありました。
そのため、GDTFサイトでは、改訂された日付も残るようになっています。
ここまででも、灯体の製造元の負担はかなり減ってきますし、道筋としてははっきりしてきますね。
他の卓との互換性
アメリカでは有名な業界紙、PLSNのポッドキャスト版が iTunesで無料で聴けますが、その中でGDTFについてのディスカッションを収めたエピソードが出ています。(2020 / 4月)
なかでもわかりやすかったのが、「絵文字のように考える」と言うことです。
これまで新しい灯体を発表したら、Avo, MA, ChamSys, Hog, Eos…. その他卓の種類によって製造元が別々にプロファイルデータを作成しました。
しかし、これが携帯の絵文字のように、ドコモでも、ソフトバンクでも、auでも、はたまたiPhoneでもAndroidでも、同じものが見れたら、便利ですよね。
現在では、ChamSysも加わっていますが、ユーザーとしては「そもそも卓なんて1種類使えれば、プロファイルの行き来もないじゃないか」と思われる方もいるかと思います。
その辺のアメリカの事情については、「おすすめ書籍1- For Programmer」の「卓を複数覚えること」でも記載させていただきましたので、そちらも見てみてください。
オリジナルの灯体プロファイルもしっかり確認する
そもそもオリジナルの灯体プロファイルがしっかりしていればいい話でもあります。
ただ、私はオリジナルのフィクスチャープロファイルも、時たま疑ってかかる必要があると、考えます。
特に最新機材の場合です。
私の実体験では、ROBEのBMFLによるRobo Spotがで始めたときに、Robo Spotテックでツアーを回る機会がありました。
(以下写真は、ステージハンズにオペしてもらっているのを私が撮ったものです。)
倉庫での準備中、Patchしたファイルでシステムテストをしても、MA2側でFollow Spotを制御できない。
ケーブルやベースステーションの設定を散々疑った後、MA2オリジナルのフィクスチャープロファイルの、Mode1とMode2の名称表記が逆になっていることに気づきました。
41chはMode1ですが、MA2の卓の中ではMode2が41chになってて、パッチは合ってるのに、、、。
発見して、膝から崩れ落ちました。
それ以降、特に新しい製品のフィクスチャープロファイルデータは、1つ踏み込んで、DMXプロファイルで確認したり、疑ってかかるようにしてます
データの共有性
GDTFはXML により作成され、3Dデータや、イメージデータも内蔵するようになりました。
XMLはエクスタンシブル・マークアップ・ランゲージということで、付け足しや拡張、カスタマイズが可能なマークアップ言語です。(ただし、GDFTファイルの拡張子は .gdtf)
その中には、アトリビュートのデータ、モードや、チャンネル、カラー、ゴボ、などが入ってきます。また、.3dsでの3Dデータも入ってます。詳しい配列はGDTF Wikiにも載ってます。
共有性というのは、まず、Vectorworks 2019 Spotlightから、オブジェクトインフォの中にもGDTFの欄ができるようになりました。
ここへGDTFデータをインポートすることができます。
その後、Vectorworks 内でアドレス、ユニバースなどの設定を行い、MVRでエクスポートすると、そのままMA3でヴィジュアライザーに出てくる。
MVR = My Virtual Rig というファイルであり、GDTFのインフォメーションもここに含まれます。
また逆に、MA3からMVRで書き出したものを、Vectorworksで読み込んで修正するなども可能となってます。
これはプログラマーからしたら便利かもしれませんね。
「いや、ここの吊り方、こうしたいんだけど、、、」と提案したMVRファイルを、そのままドラフティングチームに送る。etc…
そもそも、なんでこんな共有性が必要かですが、既に以前に書かせていただいてた、
3つのポジション、(デザイナー, プログラマー, LDの詳細記事)の間で、
Vectorworks – VW Vision (Pre-Viz) – MA3 の3つで、図面やデータをそれぞれ書き直すことなく、行ってこいができ、効率化を測ることができる、と言うことです
Light ConverseやCaptureも、もちろん素晴らしいソフトですが、Vectorworksで作成した図面をPDFにし、そこからトレースした図面を元にオブジェクトを乗っけていく、などの作業が発生するはずです。
Pre-Vizデータのクオリティの話はまた別として、
作業工程としては、他の卓を使用していても、VW VisionであればArt-Netの入力に対応しているので、クリックひとつでVectorworksの図面からヴィジュアライザーソフトへの書き換え、使用が可能です。
まとめ
MVRがどこまで他の卓にも行き渡るかは、GDTFの発展にも関わってくるでしょうし、また異なる論点になると思います。
(他のヴィジュアライザーソフトでもMVRファイルが読めるのか。etc…)
ただ、GDTFそのもののコンセプトとしては、かなり理にかなっていると思います。
照明の灯体に限らず、FX(特効)機器を始め、メディアサーバーのプロファイルにも対応し、X/Yのか、Pan/Tiltなのかの統一もできます。
PLSNのエピソードでも、「ユーザーと灯体のマニュファクチャーとの間を埋めるため」と言っていたのが印象的です。
MA3のダウンロード、GDTFサイトの登録も、無料なのですから、海外進出を考える若手は、いろんな最新機器、機能も吸収していってほしいと思います。
また、こういった情報は多くの人とシェアして成り立つ、発展していく情報です。
そのため、様々な方へシェアしていただきたとも考えます。
(Facebook, Twitter, なんでもいいです)
そこで、「こうだった」「これができない」など、フィードバックがあればと思います。
GDTFの実質的なダウンロード方法や、パッチ方法はまた別に投稿したいと思いまし、Vectorworks購入については、私も言いたいことがあるので、また記載したいです。