3部構成で、長々と書いてしまいました。
読んでくださってる方、ありがとうございます。
いきなりこのPart 3ページを見て頂いてる方へ、
これまでの2話は以下リンクです。
FOH – Part 1
FOH – Part 2
本番終了から
気の抜けない本番が終了したら、速攻でLamp OFF!
ディマーガイにFOHの電源を落とされる前に、Part 1でも記載した通り、各灯体の特性も気をつけなくてはいけません。
VL3500のインターナルレンズを閉じて、カラーフラッグを….etc.
コンサートツアーの場合、客出しを待っていることはほとんどありませんから、
(もちろんアメリカでも完パケを待つものもありますよ!)
Show Fileをセーブ、コンソール電源を落とし、システムもダウンさせた段階で、
ディマーガイにFOHパワーシャットダウンのOKを出します。
吊り物以外だと、ほとんどクーリングもしないかもしれません。
こう話すと必ずと言っていいほど、
「やっぱガイジンってテキトーなんだな」
と言われることが、本当に多いのは、残念です。
そもそも、
・クーリングが必要な灯体とはどれか。
・クーリングが必要な灯体構造とは。
・その目的:球保護?/内部機構?/収納ケース保護?
もちろん、こちらでもケアするべき灯体はケアし、その後電源を落としてます。
何より、壊れて現場で直すのは自分達ですから。
倉庫やレンタル会社ではありません。
そして、
クーリングの有無=海外クルー非難
ともとれる会話になるのは、大変残念です。
何も私が海外に心酔しきってるのではありません。
そもそも自分がそのクルーであり、何より苦労を共にした友人がいるゆえに、余計なのです。
間違っても、
「ははは、そうですよねぇ〜」とは同意できません。
こればかりは、ここにしっかりと記載しておきます。
私も反面教師として、勝手な偏見には気をつけようと思っています。
バラシへ
本番終了前に、クルーチーフは各ポジションにステージハンズを割り振ります。
大体、FOHは2名でしょうか。卓をバラせればいいですから。
本番が終わると客が流れ出しますから、終了前にクルーチーフの場所へ行き、担当の2名を捕まえて、連れてきます。
そこから一気に卓周りをパッケージし、その後スネークを回収します。
もちろん会場の条件により、スネーク回収に時間がかかる場合もありますので、その場合はディマーガイに任せたりもします。
そのあたりになると、フロア周りのものがバレて来ますので、そのケースをオーガナイズしていきます。
要はすぐにトラックへ積み込めるように、です。
卓周りとスネークが片付けば、FOH Techはトラックに直行、ということも少なくありません。
その後はトラックに付きっ切り。
バレたものを回収、積み込みの繰り返しです。
他の場所を手伝いに行かなの?思いますが、役割分担がしっかりしています。
これが「アメリカは完全分業制」と言われることの一部分でもありますが、私が感じたメリットをいくつかお伝えします。
・スムーズに行けば、ブレイク可能。
バラシの初動で、スペア機材、その他行けるものが一旦トラックへ片付けば「待つ」のも仕事です。
特に仕込みであれば、ブレイクタイムなど、セクションごとに区切りやすい。
これは自分がチーフをやっていても思いました。そこにユニオン制度が絡んでくれば尚更です。
・責任の所在がはっきりする。
誰が仕込んだのか、誰がバラしたのか、誰が積み込んだのか、はっきりします。
いきなり来て「手が空いてたから」は、助けにならないことが多い。
そこで不確定な時間短縮をしても、次回はどうなの?と。
作業時間を計算することもできません。
また、手伝う場合は「これはこうしたから」などのコミュニケーションが必要になります。
それができないのであれば「触らないでほしい」というのが、本音です。
これはアメリカに限らず「今はここ手伝って、じゃあ次はあそこで〜」とミックス状態で、仕込みにミスがあった時、
「誰やねん、これやったの!!」って時、ありませんでした?
当然私もミスはしますし、それがいけないのではなく、
その所在や原因がグレーになっていくのが、
長いツアーでは、一番良くない。
・ド新人でも成長が早い
毎回同じ自分の担当セクションをコンスタントに仕込むわけですから、覚えるのも早いです。
日本のように、毎回違う現場で、違うメンバーで、違う仕込み図を朝渡されて、というのとは、全く違う話かもしれません。
これはこれで技術を学ぶ上で必要なことであり、ハイレベルなことかもしれません。
アメリカの場合、元軍人や、DMXがなんだかよくわからない新人もツアーに駆り出されることが多々あります。
そんな彼らでも順応しやすい、という意味です。
・皆それぞれ高速化
皆、最初の数週間は、少し作業に時間をかけてでも、マーキングを改善したり、
自分のポジションで試行錯誤を繰り返します。
そのため、ツアー終盤になってくると、ツアー初期に比べ、
1時間半から2時間くらい、仕込み、バラシにかかる時間は短縮されていきます。
全部で16台のトラックを要するアリーナツアーで、ツアー終盤のバラシは2時間を切ってくるのですから、そのスピードをご想像ください。
夕食時に、ステージマネージャーから配られる搬入口のトラック配置順表に、
「今日はタイムレコードを狙います」と書いてあった時もありました。
プレッシャーです。
特に、次の会場まで移動距離があり、時間にタイトな場合。
バラシの遅れが翌日の仕込みに響いてきます。そんな時は特にステージマネージャーからもプレッシャーがかけられてきます。
「MORE FASTER!!!」と。
一番大量に仕込んでるのは、大体照明ですからね。
積み込みから即移動!
バラシ時に、悠長に積み込み表を見てると怒られる場合もあります。
「あいつ、できんのか?」など不信感になったりします。厳しい世界です。
日本の様に、マガジン雑誌やウレタンなどの「かまし」はありません。
あの様な微調整はできませんから、しっかりとオーガナイズが必要です。
ムービングライトのケースは、大体米国のトラックサイズに合うようになってますから、
縦4箱で横一列と、統一できますが、ACMEをはじめとする中国機材などは、
海洋コンテナサイズを元にケースを作成している場合が多く、難しいです。
その他、コンソールは全て1台のトラックに積むのではなく、
バックアップ卓、メイン卓、テスト用テック卓で、トラックを分けるのが理想です。
要はリスクマネージメント。
この辺のケアをクルーチーフに進言するのもFOH Techとして重要です。
また、卓の向きなど、細かい部分もケアします。
その辺は「ツアーでのコンソール管理」の記事にも書いてみました。
最後のトラックが閉まれば、そのアリーナ、スタジアムでスポーツ選手が使用するシャワールームで汗を流し、ツアーバスへ。
ただし、Bus Call Time (出発時間)を気にしてないと、マジで置いてかれます。
のんびりしずかちゃん風にシャワーを浴びてる暇はありません。
最悪のケースを考えて、必ず携帯(充電が十分残った状態で)を持っておきましょう。
朝目覚めたら、次の会場に着いてます。
まとめ
ここまで読んで頂いて、どうでしょうか?
FOH = ネットワーク系の人、とはイメージが変わったのではないでしょうか?
要は、総合的な知識と技術が必要なんです。
間違っても「White Hand」なポジションではない。
その日が終われば、手は真っ黒、ボロボロです。
また何より、クルーチーフにとってFOH Tech(もしくはディマーガイ)は、
信頼できる「セカンド」でなくてはいけません。
あるときツアー終盤に、クルーチーフが他のツアーに移らないといけない場合がありました。
その際、クルーチーフを代行したのはFOH Techであった、私です。
Part 2で「ビッグなLighting Directorは、最後の曲の途中でコンソールを離れる」
と簡単に書いてしまいましたが、
あくまで「そのFOH Techを信頼できる場合」と付け加えておきます。
LDとそりが合わず、途中でツアーを降りたFOH Techの友人も知っていますし、
友好な関係が築けなければ、卓を触らせてもくれないでしょう。
要は、こちらをリスクマネージメントの対象とされてしまうのです。
そこは厳しい世界です。
以上長々とですが、FOH Techについて、私が経験してきたことを書いてみました。
そして最後に
アメリカで仕事をしていて「Lighting is Lighting」と言われたのが、
今も印象に残っています。
こちらでも、
・Lighting Designer
・Lighting Director / Operator
・Vender Company (機材提供&施工)
という構図はもちろんありますし、厳しい世界ではありますが
「Lighting is Lighting」
照明は照明、イコールである。
という意味の言葉でした。
正直、
くだらないヒエラルキーにとらわれすぎている人との仕事は、面白くない。
また「ガイジン=テキトー」ということを押し付けられるのも、キツイ。
前述した通り、全ていっしょくたに友人達を否定されてることでもありますから。
ここにも書けないような、いろんなことがありましたが、
まずは、本当に興味がある方に「正しく」伝われば、幸いです。
また色々記載してみたいと思います。
写真&文 Yoshi
Sasade says
今回の記事も大変勉強になりました。「Lighting is Lighting」刺さりました。
次回も楽しみにさせていただきます。
今後ともよろしくお願い致します、、、!