The Automated Lighting Programmer’s Handbook (Third Edition)著者 Bred Schiller
これはプログラミングに関して特化した著書であり、Third Editionは2017年出版になっています。
ちなみに初版は2011年。
その名の通り、プログラマーに向けたハンドブックです。
これはアマゾンでも購入できますよ。
そもそも、「現場のことは現場で覚えろ!」と豪語される方も多々いるかと思いますが、私的には現場にプラスして、しっかりとした裏付けがあることに越したことはないと思います。
「現場=現場で覚えるOnly だぜ!」って方は、教育機関も否定しますしね、、。
専門でだろ?とか、大学でだろ?とか、、、。それはさておき。
また、アメリカでの自分の状況において、「人に伝えること、お願いすること」「人から聞くこと」はそもそも英語ですから、
日本語の本で学んだこと → 英語への変換が必要
であり、この作業が結構頭の中で、タイムロスになる。
通訳が私の仕事ではないから、この作業というのは、私がメインに必要なスキル!とは思っていません。ここで生まれるタイムロスも、変な不信感も出てくるし。
なので
英語ベースで学ぶ → 英語で出力(話す)
が、やはりスムーズに感じるから、なるべく英語ベースで学ぶこと優先しています。使用する単語の習得にもなります。
また、一般の単語集なんかには到底出てこない「照明さん頻繁用語」が私には必要です。そういうことが詰まってます。
もちろん、ときには日本語検索もしますよ。
著者
このBred Schiller氏とは一緒に仕事をしたこともありませんし、直接存じてはいません。ただ、彼自身Hogがメインの卓のようであるから、Hogを愛用する方には、おすすめですね。
特に2000年のシドニーオリンピックでのプログラミング、オペレートに関するを載せているのは、面白いです。
スケジュール込みで掲載されているので、実際のタイムラインがわかります。
内容のピックアップ
本を購入すると、「全部読まなきゃ!」って思うのが普通だと思うし、私も基本的にはそういう人間です。
だだ、こういう参考書にはインデックスも付いているし、自分の仕事の「形」が決まっている方も多いと思いますから、興味のある部分をピックアップする読み方で全く問題ないかと思います。
そうすることで、とっかかりのハードルも低くなります。
特に、「プログラマーとして基本的なこと」
こう聞かれて、「パッ」といくつか答えられる人間になりたいですよね。
最初のChapter 1〜3は、
- どのように仕事が来るのか
- 大量に出てくる番号を、どのように頭の中に整理していくのか
- バックアップの大切さ
- LDとの関わり方
など、技術的なことよりも、もっと基本的なこと。コミュニケーションの部分や、自分の立ち位置や責任などの部分が載っていて、興味深いです。
ここで記載されているのは、もちろんアメリカでの状況ですが、どのように仕事が来るのか、どのように成長していくのか、仕事を常げていくのか。
また、デザイナーとの関係性などは、一読する価値があります。
USBへのバックアップは、他の記事でも愛用品をご紹介いたしますが、この本にもしっかり掲載されている通り、バックアップはやはり大切です。
まだ日本で仕事をしていた時も、AvoのD4で、私もデータが飛んだ記憶がありますし、アメリカでもMA2のOn PC上でパッチデータがなくなっていたこともありました。
また、アメリカでのフェスティバルツアーで、FOHマネージメントクルーとして参加したときに、ニュージーランドから帰ってきたLDからもらったデータが、USBの不具合が原因で、トラブルシュートにかなりの時間を要してしまったことがありました。
厳密には「USBデータ内のフィクスチャープロファイルが原因」で、現地機材、ツアー機材の統合作業をはじめ、ただでさえバタバタするフェスティバルツアーでは、なかなか原因が特定できなかった苦い思い出でもあり、データマネージメントの大切さも痛感しました。
「わかってはいる」けど、忘れたときに痛い目を見るのがデータマネージメントです。
ここでもバックアップに関してしっかり載っているのは、共感できますね。
アトリビュートについて
基本的なこと、例えばDMXのことなども載っているますが、ムービングライトのアトリビュートに関することが細かく載っているのは良いですね。(本書のChapter 4)
卓を触る機会がない限り、仕込みだけではなかなか触れられない部分です。特に若手は(大きな会社になれば特に)なかなか卓にさわれないのも事実です。
日本では会社により、年功序列という壁もあるかもしれません。ただ、卓に移行する前に、データ上の構造を自分で知っておくことは、大切です。
二進法、十進法、十六進法は、卓に限らず、ネットワーク構築において欠かせないものになってきました。また、トラッキングに関することも掲載されています。
On PCソフトを実際に触りながらやっても良いですし、文章として知りたい方は、読んでみても良いと思います。
ChamSysでもNon-Tracking設定がありますし、その方が使いやすく感じる”時期”もあるものですが、細かいプログラミングには、Non-Trackingはやはり不向きである、というのが個人的な意見です。
卓を複数覚えるということ
1つの卓を使えるスペシャリストは、山ほどいます。その中から、別の種類の卓を使用できる人に絞ると、その人数は絞られていきます。
こちらで、3つの卓を覚えろ、と言われたのを覚えています。私自身、MA2、MA3、ChamSysを扱っています。
MAは被っているので、ここにAvoがあれば良いですね。日本ではAVOをよく使いましたので、今後、現在のAVOシリーズをしっかり習得していきたいと考えてます。
もちろん、卓を複数覚えるこのに対しては、様々な意見があります。
「1つ自在に使えればそれで良いじゃないか」というのも頷けます。日本では特にそうです。
ただアメリカ では、
Lighting Designer がいて、
Lighting Director がいて、
Lighting Programmerがいます。
この3つのポジションの関わり方については、別に記事を掲載しました。
日本のように、これが1つのポジションに統合され、さらに「現場チーフ」も兼ねているとしたら、卓の決定権は、自分にあって当然です。
ただし、これが3人になったら。もしくはアメリカだけではなく、ヨーロッパツアーなら。
フェスティバルツアーになったら。
予算。
ツアー中、修理できる環境。(諸外国からのサポート体制)
最悪、取り寄せられる環境。
デザイナーの意向。
ローカルクルーがセットアップしている卓の関係etc…
様々な要因から、これがMA2からChamSys、Avoになるかもしれません。それでも「私がやります!」と、手を挙げれるように、毎日研鑽しなくてはならないのです。
それを踏まえ、今の時間をチャンスと捉え、うまく活用してほしいですね。(本当にしんどいですが)
各プログラマー、デザイナーの言葉
本書のChamper 12には、実際に活躍されているプログラマー、デザイナー60人以上の言葉が掲載されています。中には私も実際に一緒に仕事をさせてもらった方が複数人載っていますし、ここだけ読むのだけでも、十分価値あるなと思いました。プロスポーツ選手ではないですが、「どのようなメンタルで、仕事に望んでいるのか」というのは、とても大切です。
また、プログラミングは、「アートとテクノロジーの融合点だ」という言葉も、印象的でした。ムービングライトの選定と、シーンへの考え方も、参考になります。
まとめ
次から次へと仕事があるのは良いことです。
ただ、その中で反省点を洗い出す時間も、しっかりとることが大切ではないかと私は思います。
できなかったこと、改善点をノートに書き出したりする作業は、アメリカ、日本に限らず、私自身やってきました。その中で、本を購入して読んでみる、というのは大切な作業であり、照明ではその本が少ない分、なかなかやらない作業かもしれませんね。特に今の時間は有効です。
もちろん、「現場で覚えろ!」も正論です。私も、困ったらいちいちメモを見よう、本を見ようなどとは、一切思いません。しかし、学校、現場、以外にもしっかりと自分で知識を求める作業をしたい、頭の中に、理論的に物事を整理したい、と個人的には思ってきました。
その一環で、今回はこの著書を紹介させて頂き、今の時間の有効活用に役立ってくれればと思います。